堀内大使によるアフリカ情勢報告(第2回:2021年3月11日)
令和3年3月11日
アフリカ連合(AU)日本政府代表部の大使の堀内俊彦です。
2月6日、7日、アフリカ各国の首脳が参加して年に一度のアフリカ連合(AU)の総会(首脳会議)が行われました。今回のAU総会の目玉は、AUの日々の実務を担うAU委員会(AUC)の正副委員長、委員の計8名の選挙(任期4年)でした。
今回は、この選挙を通して見えてきた、アフリカの今をご紹介します。なお、今回のAU総会は、COVID-19のため、電子投票含めAU史上初めてのオンラインによる総会でした。
【マニフェストから見えてくる課題】
AUCのトップである委員長職には、現職のファキ委員長(元チャドの首相)が圧倒的多数の信任を得て再選されました。
ファキ委員長は選挙キャンペーン中のマニフェストで、過去4年間の任期の実績として以下の8項目を掲げていました。
・組織改革
・紛争停止(「Silencing the guns」)
・経済統合
・若者の活躍
・AU平和基金の活性化
・AUDA-NEPAD(アフリカ連合開発庁ーアフリカ開発のための新パートナーシップ)の役割
・COVID-19への対応
・パートナーシップの再編と多様化
これをまとめると、今のAUの姿、つまり、組織の効率的運営を求める批判の声にさらされつつも改革に取り組み、以前よりはずっと少なくなってきているとはいえ紛争に見舞われつつもそのための対応の道具だても強化し、アフリカ自由貿易圏に代表される経済統合の成果を上げつつあり、十分な機会が与えられている訳ではないにしても若者に将来を託そうとし、開発の課題にも引き続き取り組みつつも、その成果を損ねかないコロナ禍にはアフリカの連帯で対応しようとし、財政面での外部(アフリカ域外のパートナー)への依存を避けつつも外部からのリソースをバランスを取りながら活かそうとしている、というAUの姿が浮かび上がってきます。
その上で、ファキ委員長は,二期目に当たるこれからの4年間の公約として以下の8項目を挙げていました。これらは、上述の過去4年間の成果と同じコインの裏表の関係になっています。
・組織改革の完遂
・行財政面での説明責任の強化
・紛争停止(「Silencing the guns」)
・アフリカ統合のためのプロジェクトの実施
・食料自給、農業やブルーエコノミーを通じた貧困削減、環境保全
・若者と女性のための政策の完遂
・危機へのアフリカ的対応
・戦略的パートナーシップの再構築
【バランス感覚と多様性】
今回の選挙に当たっては、専門家委員会が立候補者を事前に「採点」し、かつ、従来から重視されている地域バランス(東・西・南・北・中部の5つの地域からバランスよく選出する)に加え、新たにジェンダーバランス(男女同数にするパリテ)も選出の際のルールに加えられました。その結果、ファキ委員長が男性なので、ファキ委員長の再選が確定すると,副委員長は必ず女性からということになり、複数の女性候補者の中からンサンザバガンワ・ルワンダ中央銀行副総裁が選出されました。6つある委員ポストについても、男女同数のパリテにしなければならず、それもあって、6つのうち2つは決着がつかず(地域バランスを成り立たせようとするとジェンダーバランスが成り立たず、逆もまた然り)夏まで持ち越しです。ジェンダーバランスを制度として担保している点、日本も見習っていいような気がします。なお、組織改革の一環で、今回から、それまで8名だった委員が6名になり、スリム化、効率化が図られると同時に、一人ひとりの委員の責任は重くなっています。
【アフリカの顔は、南アフリカ→コンゴ民主共和国→セネガル】
AUは毎年議長国も選びますが、2021年の議長国は、コンゴ民主共和国(旧ザイール)に決まり、南アフリカから引き継ぎが行われました。コンゴ民主共和国のチセケディ大統領は早速、祖国の初代首相のパトリス・ルムンバの「アフリカの歴史、その栄光と尊厳の歴史は我々が書く」との言葉を引用しつつ、「人々に仕えるAU」とのビジョンを示し、現場主義,行動第一主義を訴えています。なお、来年2022年の議長国はセネガルになることも内定しました(なので、来年のチュニジアでのTICAD8(第8回アフリカ開発会議)にはセネガルにはAUの議長としても参加してもらうことになります)。
アフリカから学びながら、そして、多くの方の声を聞きながら、取り組んでいきたいと思っています。ご意見をお聞かせいただければ幸いです。
2021年(令和3年)3月11日
アフリカ連合政府代表部 大使
堀内俊彦
2月6日、7日、アフリカ各国の首脳が参加して年に一度のアフリカ連合(AU)の総会(首脳会議)が行われました。今回のAU総会の目玉は、AUの日々の実務を担うAU委員会(AUC)の正副委員長、委員の計8名の選挙(任期4年)でした。
今回は、この選挙を通して見えてきた、アフリカの今をご紹介します。なお、今回のAU総会は、COVID-19のため、電子投票含めAU史上初めてのオンラインによる総会でした。
【マニフェストから見えてくる課題】
AUCのトップである委員長職には、現職のファキ委員長(元チャドの首相)が圧倒的多数の信任を得て再選されました。
ファキ委員長は選挙キャンペーン中のマニフェストで、過去4年間の任期の実績として以下の8項目を掲げていました。
・組織改革
・紛争停止(「Silencing the guns」)
・経済統合
・若者の活躍
・AU平和基金の活性化
・AUDA-NEPAD(アフリカ連合開発庁ーアフリカ開発のための新パートナーシップ)の役割
・COVID-19への対応
・パートナーシップの再編と多様化
これをまとめると、今のAUの姿、つまり、組織の効率的運営を求める批判の声にさらされつつも改革に取り組み、以前よりはずっと少なくなってきているとはいえ紛争に見舞われつつもそのための対応の道具だても強化し、アフリカ自由貿易圏に代表される経済統合の成果を上げつつあり、十分な機会が与えられている訳ではないにしても若者に将来を託そうとし、開発の課題にも引き続き取り組みつつも、その成果を損ねかないコロナ禍にはアフリカの連帯で対応しようとし、財政面での外部(アフリカ域外のパートナー)への依存を避けつつも外部からのリソースをバランスを取りながら活かそうとしている、というAUの姿が浮かび上がってきます。
その上で、ファキ委員長は,二期目に当たるこれからの4年間の公約として以下の8項目を挙げていました。これらは、上述の過去4年間の成果と同じコインの裏表の関係になっています。
・組織改革の完遂
・行財政面での説明責任の強化
・紛争停止(「Silencing the guns」)
・アフリカ統合のためのプロジェクトの実施
・食料自給、農業やブルーエコノミーを通じた貧困削減、環境保全
・若者と女性のための政策の完遂
・危機へのアフリカ的対応
・戦略的パートナーシップの再構築
【バランス感覚と多様性】
今回の選挙に当たっては、専門家委員会が立候補者を事前に「採点」し、かつ、従来から重視されている地域バランス(東・西・南・北・中部の5つの地域からバランスよく選出する)に加え、新たにジェンダーバランス(男女同数にするパリテ)も選出の際のルールに加えられました。その結果、ファキ委員長が男性なので、ファキ委員長の再選が確定すると,副委員長は必ず女性からということになり、複数の女性候補者の中からンサンザバガンワ・ルワンダ中央銀行副総裁が選出されました。6つある委員ポストについても、男女同数のパリテにしなければならず、それもあって、6つのうち2つは決着がつかず(地域バランスを成り立たせようとするとジェンダーバランスが成り立たず、逆もまた然り)夏まで持ち越しです。ジェンダーバランスを制度として担保している点、日本も見習っていいような気がします。なお、組織改革の一環で、今回から、それまで8名だった委員が6名になり、スリム化、効率化が図られると同時に、一人ひとりの委員の責任は重くなっています。
【アフリカの顔は、南アフリカ→コンゴ民主共和国→セネガル】
AUは毎年議長国も選びますが、2021年の議長国は、コンゴ民主共和国(旧ザイール)に決まり、南アフリカから引き継ぎが行われました。コンゴ民主共和国のチセケディ大統領は早速、祖国の初代首相のパトリス・ルムンバの「アフリカの歴史、その栄光と尊厳の歴史は我々が書く」との言葉を引用しつつ、「人々に仕えるAU」とのビジョンを示し、現場主義,行動第一主義を訴えています。なお、来年2022年の議長国はセネガルになることも内定しました(なので、来年のチュニジアでのTICAD8(第8回アフリカ開発会議)にはセネガルにはAUの議長としても参加してもらうことになります)。
アフリカから学びながら、そして、多くの方の声を聞きながら、取り組んでいきたいと思っています。ご意見をお聞かせいただければ幸いです。
2021年(令和3年)3月11日
アフリカ連合政府代表部 大使
堀内俊彦