堀内大使によるアフリカ情勢報告(第1回:2021年1月27日)
アフリカ連合(AU)日本政府代表部の大使の堀内俊彦です。2020年10月に、AUの本部のあるエチオピアのアディスアベバにやってきました。アフリカがどこに向かおうとしているのかをお伝えしようと思い、メルマガを始めます。これまで名刺交換やメールのやりとりをさせていただいた方にお送りします。ご不要の場合は、恐れ入りますが、本メールへの返信でお知らせください。
今回は、AUやアフリカ関連の2021年の主な動きをご紹介したいと思います。
●1月 AfCFTAの開始:世界最大級の自由貿易圏の誕生
1月1日からAfCFTA(アフリカ大陸自由貿易圏)が開始されました。世界中で保護主義的な内にこもる動きがある中で、アフリカの統合への思いと開放性を示す象徴的な自由貿易圏の誕生です。リージョナルバリューチェーンの観点からも期待が寄せられています。原産地規則などの積み残しの論点もあり、また、知的財産権や投資に関するフェーズ2以降のプロセスについても不明な点はありますが、はじめの一歩を踏み出したことには大きな意味があると思います。
●1月 茂木外務大臣のアフリカ訪問。
2021年の日本外交は茂木外務大臣の中南米・アフリカ(セネガル、ケニア)訪問で幕を開けました(なお、茂木大臣は、2020年12月にもアフリカ(チュニジア、モザンビーク、南アフリカ、モーリシャス)を訪問しています)。コロナ禍という逆境だからこその対面外交により日本の意気込みを示しました。
詳しくはこちらをご覧ください。
https://www.mofa.go.jp/mofaj/la_c/m_ca_c/page3_002979.html
●2月 AU総会
AUは毎年その年の重点事項をテーマとして掲げています。2021年のAUのテーマは「芸術、文化、遺産-私たちが望むアフリカ建設のための梃子」("Arts, Culture and Heritage: Levers to building the Africa We Want")で、2月のAU総会で正式にテーマとして採択されます。理想のアフリカ像から逆算しようとしている点、アフリカのこれまでのレガシーに今日的意義、将来的意義を与えようとしている点は、非常に参考になると思います。このテーマのもとで多くのプロジェクトが計画されていますが、その中でも最も象徴的なものが、「アフリカ大博物館」計画です。AUは現在加盟国などから意見を聞いているところです。
また、2月のAU総会では、AUの中心機関であり執行機関でもあるアフリカ連合委員会(AUC)の委員長、副委員長、6人の委員(分野別)の選挙が行われ、新たな執行部が発足する予定です(コロナ禍の影響で予定通りの選挙が出来るか不確定との見方もありますが)。AUCの新たなリーダーシップの打ち出す方向性を見極めつつ、日本の強みをアピールして、共同作業による関係強化を図っていきたいと思います。
●様々なパートナーシップ、そしてTICAD(アフリカ開発会議)
多くの国や地域が、アフリカとの関係を強化しようとしています。アフリカは人気者なのです。2021年だけでも、EU、アラブ諸国、インド、トルコ、韓国、中国、フランス等(順不同)が、アフリカとのパートナーシップに基づく会議(首脳級または閣僚級)を開催予定です。
日本も、次回のTICAD8(第8回アフリカ開発会議)を2022年にチュニジアで開催予定で、今年は、その準備のためにTICAD閣僚級会合を開催する予定です。1993年生まれのTICADは、アフリカとアフリカ域外の国・地域との間のパートナーシップの先駆けですが、アフリカがまさに引く手あまたの状況下で、老舗ののれんだけに頼っている訳にもいきません。アフリカの真のパートナーであり続けるために、日本の魅力も磨かなければと考えています。
●失われた2020年を求めて
新型コロナ感染症の影響で、2020年に予定されていた、気候変動のCOP26、生物多様性のCOP15等の国際的な会議が軒並み2021年に延期となりました。2021年は、一年遅れてのマルチラテラリズム(多国間協力)の大きな節目の年になると思います。今後は、アフリカに向き合うだけでなく、このような地球規模の課題にアフリカと一緒にどう立ち向かっていくかという視点がますます重要になってくると考えています。
アフリカから学びながら、そして、多くの方の声を聞きながら、取り組んでいきたいと思っています。ご意見をお聞かせいただければ幸いです。メールアドレスは以下です。
2020年(令和3年)1月
アフリカ連合政府代表部 大使
堀内俊彦