堀内大使によるアフリカ情勢報告(第8回:2022年2月14日)
令和4年2月14日
アフリカ連合(AU)日本政府代表部の大使の堀内俊彦です。アフリカがどこに向かおうとしているのかをお伝えしようと思い、メルマガ(第8号)をお送りします。
2月5日、6日、AUにとって一年で最も大事な行事である総会(首脳級会合)が行われました。今回は、このAU総会の成果、決定事項についてご紹介します。期間中、アディスアベバの街は、アフリカ各国の国旗がはためき、「PROUD TO BE AFRICAN」「AFRICAN SOLUTIONS TO AFRICAN PROBLEMS」などと書かれたバナーや看板が目につき、「アフリカの首都」を実感しました。
●2年振りの対面開催の総会
新型コロナ感染症対策を取った上で、2年振りの対面開催の総会となりました。AUとホスト国であるエチオピア政府の対面開催にかける意気込みを感じました。
●TICAD8(第8回アフリカ開発会議)の日程固まる(8月27日、28日)
日本が中心になって進めるTICAD8の日程が今回のAU総会で正式に確認されました。これを受け、日本政府も、2月8日に、TICAD8を今年の8月27日、28日に開催することを発表しました。日程も固まりましたので準備を加速していきたいと思います。
●議長国がセネガルに
輪番の議長国が、コンゴ民主共和国からセネガルに交替となりました。セネガルのサル大統領は、その議長受諾演説で、特に以下の点を強調しました。アフリカの主な課題が浮かび上がっています。
・クーデターの続発は民主主義への脅威。
・保健(新型コロナ感染症対策ではワクチンや薬の自前の生産が重要。ガン対策にも注目を集めたい)
・経済社会開発(アフリカは潜在性を活かしきれていない。今年のAUのテーマである「栄養と食料安全保障」もアフリカの食料主権を実現するためにも必要)
・女性・若者(若者を政策の中心に据える。女性へのあらゆる形態の暴力に反対する)
・多国間主義(より開放的で、透明で、包括的なマルチラテラリズム(多国間主義)を訴える。より公正な国連安全保障理事会での代表制を求める)
・国際的な経済財政ガバナンスの改革(開発資金へのアクセス改善、適正な格付け、OECDのルール改正を含む国際的財政問題を検討するタスクフォースの設置の提案、アフリカ独自の格付け機関の創設の検討、アフリカ開発銀行による財政安定メカニズムの設置の検討)
・石油・ガスを含む鉱工業セクターの改革
・アフリカ開発銀行も活用したSDRの割り当て見直し
・アフリカ開発基金の強化
・パートナーシップ(刷新された、より公正、より公平なパートナーシップが必要)(注:この文脈で、日本を含むパートナーとの関係に言及あり)
・気候変動(アフリカは公正で公平なエネルギー転換を求める)
・AU改革(財政強化を含む改革の継続が必要)
・文化(略奪された文化財返還を引き続き求める)
●アフリカCDC(アフリカ疾病管理予防センター)の強化
アフリカでの新型コロナ感染症対策で中心的役割を果たしているアフリカCDCの権能が強化され、より機動的に活動できるようになりました。アフリカCDCは、今後は、今回の新型コロナ感染症への対策の経験、教訓も踏まえ、感染症一般に対する取組や、より広く保健システム全般に関する取組も強化する方針です。
●平和安全保障理事会の新メンバー決定
AUは、国連安全保障理事会類似の機関として、独自の平和安全保障理事会を持っています。今回の総会でそのメンバーの選挙が行われ、15の理事国が決まりました。日本も2023年からは国連安全保障理事会入りすることが想定されますので、これら15カ国との協力も進めていきたいと思います。AUでは最近、inclusive governance(包摂的(包括的)ガバナンス)の議論も盛んになってきており、その点もフォローしたいと思います。
●スワヒリ語を作業言語(working language)に追加
これまでAUでは総会などで使われる作業言語として、アラビア語、英語、フランス語、ポルトガル語が指定されていましたが、今回スワヒリ語が作業言語に追加されました。これに伴い、翻訳や通訳などのコストは増大しますが、アフリカの文化尊重のためには良いことであると歓迎する声が多いようです。
●これ以外にも、今回のAU総会では、イスラエルのオブザーバー資格問題や、エチオピアのアビィ首相から提案された「(アフリカ)大陸メディアハウス」の設立についても議論が行われています。今後具体的な動きがあれば、機会を見て御紹介させて頂きます。また、今回の主要な議論の1つとして取り上げられた、テロや、クーデターなどの非立憲的な政権交代に関する臨時総会が本年5月に開催されることも決定されました。こちらも重要なテーマですので、フォローしていきたいと思います。
アフリカから学びながら、そして、多くの方の声をお聞きしながら、取り組んで参ります。ご意見をお聞かせいただければ幸いです。
2022年(令和4年)2月14日
アフリカ連合日本政府代表部 大使
堀内俊彦
2月5日、6日、AUにとって一年で最も大事な行事である総会(首脳級会合)が行われました。今回は、このAU総会の成果、決定事項についてご紹介します。期間中、アディスアベバの街は、アフリカ各国の国旗がはためき、「PROUD TO BE AFRICAN」「AFRICAN SOLUTIONS TO AFRICAN PROBLEMS」などと書かれたバナーや看板が目につき、「アフリカの首都」を実感しました。
●2年振りの対面開催の総会
新型コロナ感染症対策を取った上で、2年振りの対面開催の総会となりました。AUとホスト国であるエチオピア政府の対面開催にかける意気込みを感じました。
●TICAD8(第8回アフリカ開発会議)の日程固まる(8月27日、28日)
日本が中心になって進めるTICAD8の日程が今回のAU総会で正式に確認されました。これを受け、日本政府も、2月8日に、TICAD8を今年の8月27日、28日に開催することを発表しました。日程も固まりましたので準備を加速していきたいと思います。
●議長国がセネガルに
輪番の議長国が、コンゴ民主共和国からセネガルに交替となりました。セネガルのサル大統領は、その議長受諾演説で、特に以下の点を強調しました。アフリカの主な課題が浮かび上がっています。
・クーデターの続発は民主主義への脅威。
・保健(新型コロナ感染症対策ではワクチンや薬の自前の生産が重要。ガン対策にも注目を集めたい)
・経済社会開発(アフリカは潜在性を活かしきれていない。今年のAUのテーマである「栄養と食料安全保障」もアフリカの食料主権を実現するためにも必要)
・女性・若者(若者を政策の中心に据える。女性へのあらゆる形態の暴力に反対する)
・多国間主義(より開放的で、透明で、包括的なマルチラテラリズム(多国間主義)を訴える。より公正な国連安全保障理事会での代表制を求める)
・国際的な経済財政ガバナンスの改革(開発資金へのアクセス改善、適正な格付け、OECDのルール改正を含む国際的財政問題を検討するタスクフォースの設置の提案、アフリカ独自の格付け機関の創設の検討、アフリカ開発銀行による財政安定メカニズムの設置の検討)
・石油・ガスを含む鉱工業セクターの改革
・アフリカ開発銀行も活用したSDRの割り当て見直し
・アフリカ開発基金の強化
・パートナーシップ(刷新された、より公正、より公平なパートナーシップが必要)(注:この文脈で、日本を含むパートナーとの関係に言及あり)
・気候変動(アフリカは公正で公平なエネルギー転換を求める)
・AU改革(財政強化を含む改革の継続が必要)
・文化(略奪された文化財返還を引き続き求める)
●アフリカCDC(アフリカ疾病管理予防センター)の強化
アフリカでの新型コロナ感染症対策で中心的役割を果たしているアフリカCDCの権能が強化され、より機動的に活動できるようになりました。アフリカCDCは、今後は、今回の新型コロナ感染症への対策の経験、教訓も踏まえ、感染症一般に対する取組や、より広く保健システム全般に関する取組も強化する方針です。
●平和安全保障理事会の新メンバー決定
AUは、国連安全保障理事会類似の機関として、独自の平和安全保障理事会を持っています。今回の総会でそのメンバーの選挙が行われ、15の理事国が決まりました。日本も2023年からは国連安全保障理事会入りすることが想定されますので、これら15カ国との協力も進めていきたいと思います。AUでは最近、inclusive governance(包摂的(包括的)ガバナンス)の議論も盛んになってきており、その点もフォローしたいと思います。
●スワヒリ語を作業言語(working language)に追加
これまでAUでは総会などで使われる作業言語として、アラビア語、英語、フランス語、ポルトガル語が指定されていましたが、今回スワヒリ語が作業言語に追加されました。これに伴い、翻訳や通訳などのコストは増大しますが、アフリカの文化尊重のためには良いことであると歓迎する声が多いようです。
●これ以外にも、今回のAU総会では、イスラエルのオブザーバー資格問題や、エチオピアのアビィ首相から提案された「(アフリカ)大陸メディアハウス」の設立についても議論が行われています。今後具体的な動きがあれば、機会を見て御紹介させて頂きます。また、今回の主要な議論の1つとして取り上げられた、テロや、クーデターなどの非立憲的な政権交代に関する臨時総会が本年5月に開催されることも決定されました。こちらも重要なテーマですので、フォローしていきたいと思います。
アフリカから学びながら、そして、多くの方の声をお聞きしながら、取り組んで参ります。ご意見をお聞かせいただければ幸いです。
2022年(令和4年)2月14日
アフリカ連合日本政府代表部 大使
堀内俊彦