堀内大使によるアフリカ情勢報告(第10回:2022年6月18日)
アフリカ連合(AU)日本政府代表部の大使の堀内俊彦です。アフリカがどこに向かおうとしているのかをお伝えしようと思い、メルマガ(第10号)をお送りします。
ここしばらくAU関係者の間で話題になっている言葉がUCGです。Unconstitutional Change of Governmentsの略で、クーデターのように憲法に反する形での政権交代(政権奪取)を意味します(日本語では、非憲法的政権交代と呼んでいます)。今回は、このUCGについての最近のAUでの動き、議論をご紹介します。
【UCGが話題になる背景】
アフリカ大陸でクーデターが続けて起こっています(UNDPによると、2021年から22年にかけて6つのクーデターと2つのクーデターの企てあり)。実際、現在、AUはクーデターによる政権奪取への制裁措置として、4カ国のAU加盟国としての資格を停止しています。
【AUのUCG特別サミット】
クーデターそしてクーデターによる政権交代自体はもちろん褒められたことではありません。ただ、見方を考えれば、UCGが話題になっていることは、AUがピア・プレッシャー(仲間の間での相互圧力)を使って自浄作用を発揮しようとしている顕れとも取れます。このことは、かつて内政不干渉を原則に、お互いにお互いを見て見ぬ振りをしていた頃と比べると大きな進展だと思います。アフリカ自身がこのままではいけないと自ら考え行動したためだと思います。
このようなAU内での大きな潮流を受けて、AUは5月27日、28日に赤道ギニアでUCGに関する特別サミットを開きました。このサミットでは、UCGへの強い非難、既存のメカニズムの活用と新たな資源導入によるガバナンス強化、市民社会との連携、市民(特に若者)とのコミュニケーション強化等の方策が改めて首脳レベルで確認されました。
【これからの方向性】
まずはそもそもクーデターなどが起こらないようにすること(起こりにくくすること)、そして、もしクーデターなどが起こってしまった場合でも、選挙や国民対話を通じた民政、憲法秩序へと移行・復帰していくことの2つの局面での対応が必要だと思います。これまで以上にアフリカ各国のガバナンスが問われることになります。
ロシアによるウクライナ侵攻に関する国連総会でのロシア非難決議の際のアフリカ各国の投票行動(非難する決議に賛成が28か国、棄権が17か国、欠席が8か国、反対が1か国)は、ある国の国内的なガバナンスと対外的な行動(国際協調への態度)との間に相関関係があることを一定程度示していると思います。アフリカで起こることは、我々にとって決して対岸の火事ではありません。
【人の振り見て・・・】
「西側」の国を含め、どの国もその国なりの課題を抱えていると思います。説教臭さや偽善はアフリカの国々が最も嫌うことです。同じように課題を抱える者として、この古くて新しいガバナンスの問題に、日本もアフリカと一緒に考えて一緒に取り組んでいくという水平的アプローチ、相互作用的アプローチで臨んでいくのがいいのではないかと思います。
アフリカから学びながら、そして、多くの方の声をお聞きしながら、取り組んで参ります。ご意見をお聞かせいただければ幸いです。
2022年(令和4年)6月18日
アフリカ連合日本政府代表部 大使
堀内俊彦